この記事の結論(要点)
腸内細菌が脳の働きや認知機能に関わっている可能性は、国内外の研究機関でも注目されているテーマです。ただし「腸内環境を整えれば認知症を防げる」と証明されたわけではありません。分かっていること・まだ分かっていないことを整理したうえで、まず自分の腸を知ることに意味がある、というのがこの記事の立場です。
「腸は第二の脳」という言葉を、耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。実際、腸には脳に次いで多い約1億個もの神経細胞が存在し、脳とは独立して働く部分があることから、そう呼ばれるようになりました。しかし近年の研究で注目されているのは、腸が「脳と無関係に働く」ことではなく、むしろ腸と脳が絶えず情報をやり取りしているという事実です。
腸内細菌 → 短鎖脂肪酸 → 免疫・炎症 → 脳、という道すじ
腸内には1,000種類・100兆個ともいわれる細菌が暮らしています。これらの腸内細菌は、私たちが消化しきれない食物繊維などを発酵させ、「短鎖脂肪酸」と呼ばれる物質を作り出します。この短鎖脂肪酸は腸の粘膜を健康に保つだけでなく、全身の免疫システムや炎症反応にも影響を与えることが分かってきました。
そして近年、この「腸内細菌がつくる物質」が、脳内の免疫細胞(ミクログリアなど)の働きにまで関わっている可能性を示す研究報告が増えています。腸内細菌→短鎖脂肪酸→免疫・炎症→脳、という一連の道すじが、認知機能を考えるうえでの新しい切り口になりつつあるのです。
分かっていること、まだ分かっていないこと
現時点で言えること
・軽度認知障害(MCI)の方の腸内には、健康な人と異なる細菌の偏りがみられると報告されています
・腸内環境の乱れが、脳の慢性炎症を介して認知機能に影響する可能性が指摘されています
・ただし「腸内環境の乱れが認知症の原因である」と証明されたわけではなく、関連の全体像はまだ研究が進められている段階です
誠実に言えば、腸と脳の関係はまだ「解明された」テーマではありません。だからこそ、私たちは「腸内細菌ですべてが分かる」という言い方はしません。まだ分かっていないことが多いからこそ、今の自分の腸内環境を知っておく意味がある、というのが健腸ナビの立場です。
「腸活」を一般論で終わらせない
世の中には「発酵食品を食べれば腸に良い」「食物繊維を摂れば腸活になる」といった一般論があふれています。それ自体は間違いではありませんが、腸内細菌の顔ぶれは一人ひとり異なるため、同じ食事をしても効果の出方は人によって違います。一般論としての腸活の先に、「自分の腸には何が住んでいて、何が足りないのか」を知るという個別化されたステップがあると、対策はより効率的になります。
本記事は腸内細菌研究および認知症予防に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の効果・診断・治療を保証するものではありません。健腸ナビは病気の診断・治療を目的とした医療行為ではなく、腸内細菌叢の状態から病気のリスク傾向を示すものです。気になる症状がある場合は医療機関にご相談ください。
